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あな-かしこ
【あな-かしこ】


((感動詞「あな」+形容詞「かしこし」の語幹))[1]ああ、恐ろしい。ああ、怖い。
[例]あなかしこ、御気色(けしき)も悪(あ)しう侍めり」〈蜻蛉・下〉
[訳]ああ、恐ろしい、ご機嫌が悪いようでございます」


[2]ああ、おそれ多い。ああ、もったいない。
[例]「『あなかしこ』とて、箱に入れ給ひて」〈竹取・火鼠の皮衣〉
[訳]「(阿倍右大臣(あべのうだいじん)は)『ああ、おそれ多い』といって、(火鼠(ひねずみ)の皮衣を)箱にお入れになって」
[3](他に呼びかけて)おそれ入りますが。恐縮ですが。
[例]あなかしこ、このわたりに、若紫やさぶらふ」〈紫式部日記〉
[訳]おそれ入りますが、このあたりに、若紫(という方)はおいでですか」
<参考>用例中の「若紫」は、すでに源氏物語の作者として有名であった紫式部のことを指す。
[4]〔下に禁止の語を伴って、副詞的に用いて〕決して(…するな)。
[例]「このことあなかしこ人に披露すな」〈平家・五・咸陽宮〉
[訳]「このことは決して人に知らせるな」
[5](手紙の末尾に用いて)謹んで申し上げましたの意を表す。
[例]「よろづはさぶらひてなん。あなかしこ」〈源氏・宿木〉
[訳]「すべてはお伺いして(から申し上げます)。あなかしこ
<参考>[5]は、古くは男女とも用いたが、後に女性しか用いなくなった。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5092308