100辞書・辞典一括検索

JLogos

11

さ・る
【さ・る】


<一>[自][ラ四]<二>[他][ラ四]ら/り/る/る/れ/れ

《季節・時間》やって来る。…になる。→<一>[自][1]
《退去・分離》立ち去る。離れる。→<一>[自][2]
退位する。退く。→<一>[自][3]
隔たる。遠ざかる。→<一>[自][4]
遠ざける。引き離す。→<二>[他][1]
離縁する。→<二>[他][2]
《色》 あせる。変化する。→<一>[自][5]
《出家・死去》出家する。死去する。→<一>[自][6]
もともと時間的・空間的な移動や変化を表す。古語では来る場合や離れる場合に用いられた。
<一>


[1](季節や時間が)やって来る。…になる。
[例]「◎夕されば小倉(をぐら)の山に鳴く鹿(しか)は今夜(こよひ)は鳴かず寝(い)ねにけらしも」〈万葉・八・一五一一〉
[訳]⇒ゆふさればをぐらのやまに…〔〔和歌〕〕
[2]立ち去る。離れる。離れていく。遠ざかる。
[例]「知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来(き)たりて、いづかたへかさる」〈方丈〉
[訳]「(私は)知らない、生まれてくる人死んでいく人が、どこから来て、どこへ立ち去っていくのかを」
[3]退位する。退く。身をひく。
[例]「御位(くらゐ)をさらせ給ふと言ふばかりにこそあれ」〈源氏・賢木〉
[訳]「(桐壺(きりつぼ)院は)お位をご退位なさると言うだけあって」
[4]隔たる。間隔を保つ。遠ざかる。
[例]「宮の北に二里をさりて方丈の室を造りて」〈今昔・三・一四〉
[訳]「宮殿の北から二里遠ざかって方丈(=約三(メートル)四方)の小さな部屋をつくって」
[5](色が)あせる。変化する。移り変わる。
[例]「◎雨降れば色さりやすき花桜薄き心も我が思はなくに」〈貫之集・六二〇〉
[訳]「◎雨が降ると色がすぐにあせてしまう桜の花よ。(その花のように愛情の)薄い(あなたの)心も私は(いやだと)思わないのだよ」
[6]〔「世をさる」の形で〕出家する。死去する。(この世と)縁を切る。
[例]「今はと世をさり給ふべき程、近くおぼしまうくるに」〈源氏・幻〉
[訳]「(光源氏は)今こそはと出家なさるべき時機が、近いといよいよ腹をお決めになるが」
<参考>出家する意味を表す慣用的な表現として、他に「世を捨つ」「世を背く」「世を逃(のが)る」「世を離(はな)る」などがある。
<二>
[1]遠ざける。引き離す。取り除く。
[例]「なほしばし身をさりなむと思ひ立ちて」〈蜻蛉・中〉
[訳]「やっぱりしばらくの間(夫の藤原兼家(かねいえ)から)自分を遠ざけようと思い立って」
[2]離縁する。
[例]「もとの妻をばさりつつ、若く、かたちよき女に思ひ付きて」〈宇治拾遺・四・七〉
[訳]「もとの妻を離縁する一方で、若く、美しい女性に思いを寄せて」




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5105831