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せち
【せち】


<形動>[ナリ]なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ

漢語「切」が形容動詞化した語。「親切」「切実」「切望」「大切」の「切」であり、心に強く迫る感情やひたすら思うようすを表す。


[1]大切だ。重大だ。切迫している。
[例]「大納言、宰相もろともに、忍びてものし給へ。せちなること聞こえむ」〈宇津保・国譲・下〉
[訳]「大納言と、宰相はご一緒に、目立たないようにおいでください。重大なことを申し上げましょう」
[2]いちずだ。ひたすらだ。熱心だ。しきりだ。
[類]頓(ひたぶる)
[例]せちに隠れ給へど、おのづから漏り見奉る」〈源氏・桐壺〉
[訳]「(藤壺(ふじつぼ)は)ひたすら顔をお隠しになるが、自然に(光源氏は)ちらちらと拝見する」
[3]痛切だ。切実だ。
[例]「嘆きせちなる時も、声を上げて泣くことなし」〈方丈〉
[訳]「悲しみが痛切なときでも、(権勢の人に遠慮して)声をあげて泣くことはない」
[4]すばらしい。深く心に感じる。
[例]「『◎秋の日のあやしきほどのゆふぐれにおぎ吹く風のおとぞきこゆる』とひきたりしほどこそせちなりしか」〈大鏡・道長・下〉
[訳]「『◎秋の日の不思議なほど人恋しい夕暮れに(訪ねてくる人の音ではなく)荻の葉を吹く風の音だけが聞こえてくるよ』と(女御が琴を)弾いたときはすばらしかった」
<参考>もともと呉音の「せち」が中古末には「せつ」ともいうようになる。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5106149