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人の命の


忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
〈拾遺・恋四・八七〇、大和・八四・右近(うこん)〉
[訳]「あなたに忘れられたわが身をつらいとは思いません。それよりも私との愛を誓ったあなたの命が神罰のために失われるのでないかと思うと、たいへん惜しく思われてなりません」
<参考>『大和物語』の八四段に、「同じ女、男の忘れじとよろづのことをかけて誓ひけれど、忘れにける後に言ひ遣りける」とあり、一連の話からこの恋の相手は藤原敦忠(あつただ)とされる。皮肉であろうか、自分はどうでもかまわないが、神に命をかけて誓った男の身が案じられるというのである。三句切れとして、忘れ去られることも考えずに愛情を誓い、心変わりした男の命が心配だと女が気づかうという解釈もないでもないが、二句切れと見る通説の方が穏当であろう。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5113615