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黄金道路
【おうごんどうろ】


国道336号のうち,十勝地方広尾町広尾橋(ツチウシ)と日高地方えりも町庶野(しよや)間の29.9kmの別称。この路線は,花崗岩・変成岩類が褶曲作用を受けた地層が急峻な海食崖をなす襟裳(えりも)岬の東側を北上しており,工事期間中から多額な費用を要したため,いつのまにかこの名が生まれたという。かつては日勝海岸路といわれ,昭和7年の「事務概況報告」には「日高十勝ヲ連絡スベキ日勝海岸道路ハ年々多額ノ工費ヲ以テ進捗中ニアレドモ」と記される。道路建設は十勝側が昭和2年,日高側が昭和3年から着工し,昭和9年に竣工,工費総額93万円,うち日高側は17kmで36万円,十勝側は16kmで56万円であった。工事の犠牲者は20人で,たこ部屋も設置されたといい,とりわけ広尾村のモイケシとルベシベツの第六工区が難工事とされた。この海岸路は古くから松前とトカチ場所・ネモロ場所を結ぶ主要路であったが,往来は困難を極めた。この道路の完成により,大正15年に竣工した様似(さまに)道路を経由することで日高と十勝の交通条件が大幅に改善された。この道路の開通前は庶野から猿留(さるる)山道を経て目黒に至り,そこから海岸の磯伝いにピタタヌンケに達し,更に近藤重蔵の開削とされるルベシベツ山道を通って広尾に出るのが通例であった。その後ルベシベツとピタタヌンケの間は明治24年に開削した隧道を通る海岸道路が利用された。広尾村では広尾からタニイソ(タンネソ)までは昆布の産地で,海岸線が昆布干場に利用されていたため,この道路の計画が公になると,当初は漁民の反対が多かった。しかし,道路完成後は昆布時期のみ滞在していた漁民が次第に定住し,新たに漁業集落が出現した。昭和21年からは幌泉(現えりも町),さらには様似~広尾間の国鉄バス路線が開設され,百人浜や襟裳岬と並び海食崖を流下する滝や雄大な海岸線が多くの観光客を集めている。またこの道路は産業道路としても利用され,道央と釧路方面とは国道336号を介して短絡路線となり農水産物の輸送に大きな役割を果たしていたが,新たに国道274号が開通したことから重要性は低下した。現在は日高山脈南部に新たな路線(道道静内中札内線,国道236号広尾~様似間)が建設中で,それらの完成によりこの道路の重要性は一層相対的なものとなろう。沿線のルベシベツ~タンネソ間に黄金トンネルがあり,えりも町目黒から庶野に至る標高80~100mの嶮岨な海食崖は黄金懸崖とも呼ばれる。内陸の山地には豊似(とよに)湖がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7001132