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樽前山神社
【たるまえさんじんじゃ】


苫小牧市矢代町にある神社。旧県社。祭神は大山津見神・久久能智神・鹿屋野比売神。苫小牧川右岸に位置する。霊峰樽前山の山霊を信仰して祀った。もと勇払郡苫小牧村大字樽前村にあった樽前権現社をその前身とすると伝える。樽前権現社は,松浦武四郎の「東蝦夷日誌」に「垂舞山の拝殿(三間二間)有。本尊は円空鉈作の観音,寛文六酉八月廿八日此処にて作納玉ひしを,アブタに持行置しを文化二乙丑の秋七月再び爰に納むと也」と見え,円空作の観音像を本尊としていた。円空が観音を寛文6年に樽前山で製作したという記述には疑問があり,他の場所で製作したものを文化2年頃に樽前山麓に移したと考えられる(苫小牧市史)。また,元治2年には場所支配人山田仁右衛門・山田文治らによって石造手水鉢が奉納されたといわれ(樽前山神社御由緒略記),当地がユウブツ場所における鰯漁業の中心として繁栄していた頃に,場所請負人や漁業者たちの崇敬を集めていたとみられる(苫小牧市史)。その後明治7年苫小牧の地に移転,樽前山神社と称し郷社に列した。以後千歳・勇払・白老3郡の総鎮守となった。大正10年いわゆる「鯉のぼり大火」によって社殿焼失,文書記録類も焼亡した。のち現在地に再建。昭和3年樽前山頂に奥宮を建立,同11年県社になった。例祭は7月15日で,神輿の海上・市中渡御がある。なお,明治7年の樽前山神社の苫小牧移転後,かつての樽前権現社社地には新たに樽前神社が設けられ,一時覚生地区に移転したものの,大正12年旧地に戻ったという。現在錦岡樽前神社と称し,円空仏はここに安置されている(同前)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7004909