谷地頭町
【やちがしらちょう】

(近代)明治６年～現在の町名。はじめ函館市中の１町，明治32年函館区，大正11年からは函館市の町名。もとは尻沢辺町の一部。町名は，地内の平坦部が低湿地でその周囲が乾燥した高台であることから，谷地の頭としたとする説（初航蝦夷日誌）と，低湿地に沼がありその形状が頭部にみえたことによるとする説（北溟雑記）がある。地名としては江戸期から見え，文政５年の「箱館申送書」（函館市史史料１）に「尻沢辺村内字谷地頭ノ地所拝借致シ，諸木植付ケ，畑地等開発致シ度」とあった。安政年間外国船舶が入港すると，食用肉の需要が起こり，箱館奉行所は地内で牛や豚の飼育を行った（大日古）。また官営事業として安政３年製紙業，同５年陶器業，文久２年砥石・硯石の製造が行われた。安政４年銭座が設立。箱館通宝と称する鉄銭が鋳造され，同６年まで10万貫余を鋳造。明治８年旧幕府脱走軍兵士の碧血碑建立。同９年の戸数11・人口52（管内村町別戸口表）。同11年黒田長官は地内低湿地の埋立てと宅地化を指令。この事業は，途中大火で中断したが，同14年竣工。商人の別荘地にあてられた。同19年の戸数28・人口113（伊藤鋳之助文書）。明治15年勝田弥吉が鉱泉付きの料理店を開き（現勝田温泉），浅田楼・柳川亭・相坂楼などの料亭があった。明治20年代谷地頭温泉と通称された。明治13年会所町より函館八幡宮が遷座。同26年イギリス聖公会によりアイヌ学校が開設される。同31年函館ビール会社が設立。同36年函館要塞指令部が大字亀田村のうち千代ケ岱より移転。人口は，明治30年194，同38年619。同40年大火により人口流入が顕著。大正９年の世帯数682・人口3,080。同12年谷地頭尋常高等小学校が開校。大正２年函館水電経営路面電車の終点の停留所が設置。昭和10年の世帯数412・人口2,148うち商業170・公務自由業68・水産業46・交通業45など（職業別世帯分散状況調査書）。昭和９年の大火で600世帯が罹災。同28年市営谷地頭温泉が営業を開始。昭和30年の世帯数768・人口3,486。同33年から５か年で道営谷地頭団地を造成。同36年厚生年金老人ホーム，同49年市営第２老人福祉センター設置。同40年一部が青柳町に編入。世帯数・人口は，同年1,131・4,075，同50年1,108・3,511。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7009145