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長者山新羅神社
【ちょうじゃさんしんらじんじゃ】


八戸市糠塚にある神社。旧県社。祭神は素盞嗚尊・新羅三郎源義光(甲斐源氏の祖),ほか6柱。長者山頂に所在する。長者山は八戸市街地が位置する古扇状地から残丘状に突出する小丘で標高45m。この丘の周辺には八戸藩主の菩提寺だった南宗寺,大慈寺,その他の寺社があり,八戸城の南の守りとしてここに寺社を集めたものと思われる。古くは虚空蔵堂,三社堂,新羅大明神などと称した。寛文5年の無量院御立願状に「一,〈糠塚ノ〉権現 鐘緒之事」とあるのは(常泉院文書/八戸市史),当社本田の西にある地主権現(現,境内社の高龗神社)といわれる。これが当社の起源とみられ,慶応元年には新羅神社200年祭を挙行している(八戸藩史料)。延宝6年十一日町から虚空蔵菩薩を勧請したと伝え,そのため虚空蔵堂と称した。これ以前,「八戸藩日記」寛文12年9月12日条に「常泉院申上ルハ虚空蔵御建立付やしき申請度と申上ル」とあるが(八戸市史),これは現在の願栄寺(現八戸市十一日町)のことといわれる(八戸祠佐嘉志写,八戸市立図書館蔵)。従って願栄寺から虚空蔵菩薩を勧請したのであろう。延宝7年8月には早くも高10石が寄進され(八戸藩日記/八戸市史),天和3年には新羅大明神を勧請合祀したと伝える。元禄7年社堂破損のため再建されたが(八戸郷土史),この時までに愛宕権現も勧請されていたらしい。同年8月13日に「虚空蔵新羅愛宕三社」の遷宮があり,代参として八戸藩家老の煙山覚左衛門が派遣され,10月には別当の常泉院へ引渡された(八戸藩日記)。正面に新羅大明神,右方に虚空蔵菩薩,左方に愛宕権現を祀り(八戸祠佐嘉志写,八戸市立図書館蔵),三社堂とも称すようになった。宝暦5年の堂林寺門間数改書上帳には「長者山三社御堂」と見える(常泉院文書/八戸市史)。常泉院は八戸藩初代藩主南部直房がまだ盛岡に在住していた時,同地の下小路の水口虚空蔵を篤く崇敬し,家士の高橋勘五郎を山伏に取り立てて無量院と改めさせ,祈願所を命じたのが始まりという(八戸祠佐嘉志写,八戸市立図書館蔵)。寛文5年常泉院と名を改め,四人扶持を給された(八戸藩日記)。同7年には領内修験の総録を命じられ(常泉院文書/八戸市史),のち領内十か寺の1つとなった。延宝7年8月常泉院に高10石が寄進されて虚空蔵堂の高10石とあわせて高20石となり(八戸藩日記),その後30石の加増があったらしく,「八戸藩日記」元禄14年4月3日条には50石と見える。寛保4年の諸寺院寺号山号帳にも「五拾石 〈聖護院御門跡派 長者山〉常泉院」とある(八戸市立図書館蔵)。当社は八戸藩の最も重要な祈願所の1つで,藩命により多くの祈祷を行った。寛政2年2月に毎年正月中,国家安全・五穀豊穣・漁乞の祈祷を行うように命じられた6寺社の1つでもあり,その際20貫文の祈祷料が供えられている(八戸藩日記)。また常泉院は元禄3年6月に虚空蔵堂で雨乞の湯立もしている(同前)。現在の本殿と拝殿は文政10年の造営で(八戸藩史料),「八戸風土記」に「八戸藩主信真文政中に大に社殿を拡張し……近郷に其比を見ず領内唯一の大社なり」と記されている(県史)。この造営に当たり文政9年8月,同10年閏6月藩によって富くじが発行された(八戸藩日記・八戸藩勘定所日記/八戸市史)。富札は1枚500文で3,500枚発行され,各村々に強制的に割り当てられた(三浦家文書/八戸市立図書館蔵)。「八戸藩日記」享保6年6月19日条によれば,同年法霊者(現龗神社,八戸市内丸2丁目)の神輿渡御が始まると,当社は御旅所とされた。祭礼は9月19日から2夜3日で,文政8年の祭礼から藩の一の手10騎の行列参拝が初めて行われ,翌年には二の手10騎が代わって参拝し,以後交代で勤めるようになった。文政10年閏6月には法霊社(7月)と当社(9月)の祭礼に長者山馬場で歩射騎射の古法式並びに打毬興行を行うよう藩の番士が命を受けている(八戸藩日記)。明治維新の神仏分離で新羅神社と改称し,八坂神社を合祀した。「八戸藩日記」享保2年5月22日条によると,八坂神社は古くは天王堂と呼ばれ,享保2年領内に悪疫が流行したため,御伊勢道(現神明宮,八戸市廿六日町)の移転跡地に豊山寺(廃寺)が願主となって1社を造営,牛頭天王を勧請したのが創祀という。明治4年2月藩主の霊社も南宗社から当社へ移されている(八戸藩日記)。昭和51年現社名に改称。祭礼は8月1日~3日に龗神社・神明宮とともに八戸三社大祭として行われ,2日(当社例祭日)には旧馬場で加賀美流騎馬打毬(県指定無形民俗文化財)が実施される。この騎馬打毬は文政10年の社殿再建の際初めて行われ,2組に分かれた騎馬武者が先に網のついた棒を使って毬を所定の場所に投げ込む競技。全国で3か所しか残っていない中の1つである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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