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熊野神社
【くまのじんじゃ】


名取市高館にある神社名。陸奥熊野社の1つ。熊野本宮・新宮・那智三山の形式をとり,典型的な熊野信仰を伝えたもの。新宮別当寺(神宮寺)の文殊堂所蔵の写経は,中尊寺一切経のような豪華なものではなく,普通の写経であるが,数の多い(およそ2,000巻)ことでは東北有数のものである。その奥書には平安末期にさかのぼるものがあり,また「吾妻鏡」文治5年9月18日条には「泰衡一方後見熊野別当」とあり,同5年10月2日条には,この奥州合戦の後,佐藤荘司・名取郡司とともに捕虜となっていたものが,この日放免されたとあり,この熊野別当も名取熊野社別当と考えられる。したがって平安末期にはさかのぼる熊野社で,平泉藤原氏と深く結びついていたことがわかる。高館山上那智山には中世の懸仏が数多くあり,中世,広く崇敬を集めていたさまがしのばれる。名取川を下った河口の閖上(ゆりあげ)港入港の船から非常によい目印になるために,熊野社は紀州から海路閖上を経て勧請されたと伝えられている。古風を残す伎楽面も伝え,今日も古い延年の舞の伝統を伝えている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7017540