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御座石神社
【ござのいしじんじゃ】


仙北(せんぼく)郡西木(にしき)村下檜木内(しもひのきない)相内潟鎮座。祭神は辰子姫(たつこひめの)命。辰子は田沢湖の主といわれる伝説上の女性。湖畔の院内(いんない)に住む辰子は永遠の若さと美貌を保ちたいと院内嶽の神に願をかけた。満願の夜白髪の老人の教えに従い北に向かって山中を行き,清水を求めて呑み,竜に化身して湖の主となったという。御座の石とはこの深い湖には神秘な存在ともいうべき水中の平坦な岩。秋田の2代藩主佐竹義隆が湖水遊覧の折に座ったことによる名と伝える。湖の神秘性と藩主への畏敬が辰子の伝説への哀感と入り混じって神社は創祀されたのであろう。自然崇拝と,偉人崇敬による神格の出現の1つの形である。辰子はいまブロンズ像となって神社に近い湖岸の水中に立ち,神社の鳥居は湖上に美しく影を落としている。なお「秋田風土記」では辰子は「神鶴子」となっていて,大同年間院内山上の千手観音に100日の願をかけたことになっている。また11月18日八郎潟の八郎が妻神鶴子のもとにやって来るが,その物音を聞くと病気になるので,湖畔の里では太鼓や板をたたいてその音を聞かないようにする。春に八郎が帰る時に八郎潟の氷が溶けるという伝説を記しながら,編者淀川盛品は,湖は太古からの湖でこの時わき出たものではなく,八郎の来るということも奇事だ,祭事の怪語などは略して記さない。たぶん神鶴子が故あって投身したことに託した伝えであろうと,評言を付している。例祭は8月10日。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7020976