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太平山三吉神社
【たいへいざんみよしじんじゃ】


秋田市太平山谷(たいへいやまや)地内の太平山頂に奥宮が,秋田市赤沼に総本宮と称する里宮が鎮座。祭神は大己貴(おおなむちの)命・少彦名(すくなびこなの)命・三吉霊神。本来は太平山の山の神をまつった自然信仰から発したが,修験者が薬師如来をまつったので習合神の少彦名命やそれと親密な大己貴命が祭神とされたのであろう。太平山の神は「太平山仙人三吉権現」(元禄4年棟札)と呼ばれる荒神で,乱髪長爪,長柄の樵斧を持ち雲に乗った姿の巨大な山人とされていて,山麓の戦国武将藤原三吉が永井将監に攻め亡ぼされ,山中に遁入し怪異となったとの俗説も伝わる。菅江真澄は「山鬼人」の意といい,巨人ダイダラボッチによる太平(だいたら)であるという民俗学的解釈をする人もいる。社伝では天武朝に役小角(えんのおづぬ)の創建で,延暦20年坂上田村麻呂が再興したというが,これは,東北に多い修験道の信仰と蝦夷征定伝承の混合した伝承で,本来の山岳信仰が修験道と結合していたものが,近世になって社殿を興したものであろう。山谷の枝郷野田村の参道登山口には別当寺東光院があった。里宮は,赤沼に映ずる逆さ太平山をめでて天明元年藩主佐竹義敦の雪見殿が置かれた場所に,慶応4年藩主の奥宮遙拝祈願所を建てたのが起こりで,明治12年県社となり,大正2年に里宮の社殿が建立された。正月17日の梵天祭は有名で,長さ3mの大わらじ,日本一と称する大煙管,直径1mの大盃などが奉納されている。例祭は5月8日・10月17日。昭和53年社殿大改築の上,総本宮と称している。市民の初詣でもにぎわい,勝負の神・好運の神として広く崇敬を受け,北海道方面からも参拝客がある。奥宮の鎮座する太平山は秋田市と近郊のシンボルで,古くから一泊登山の信仰行事が慣習化していた。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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