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老犬神社
【ろうけんじんじゃ】


大館(おおだて)市葛原(くぞはら)鎮座。祭神は老犬シロの霊。動物の霊をまつった太古的信仰形態を含む神社。隣の鹿角(かづの)市の草木集落に350年ほど前定六というマタギ(猟師)が住み,シロと呼ぶ大型の猟犬を持っていた。このマタギは清和朝などという先祖万三郎山立家の系図や,天下御免の自分の又鬼(またぎ)免許状も伝えていたが,ある雪の日にカモシカを追って三戸城近くまで遠出し見張の兵につかまり申し開きができなかった。シロは主人の危急を救うべく数十kmを駆けもどり,免許状を首に結んでもらい一気に主人のもとにもどったが,時すでに遅く定六は処刑済であった。シロと定六の妻は葛原に居を定めていたが,やがてシロは死んだ。その後通り合わせた武士たちに犬の亡霊がたたりをするので,村人が山中に老犬神社を建ててまつった。この「ハチ公」の大先輩のような話は,秋田犬の本場だけに長く村人に伝えられ,昭和11年火災にかかった社殿も村人の協力で再建された。同45年創建350年祭が執行されてからは,4月17日の例祭には村人のほかに秋田犬保存会の会員らが全国から集まりにぎわうようになった。なお信仰を支えた一因に,神社の麓に青い湧水があり,この水が苗代の病害を防いで,村人から重宝がられてきたことがある。近くの猿田鉱山からの硫酸銅液が天然の消毒液となっていたものである(社伝・大館市史・各駅停車秋田県)。




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「角川日本地名大辞典」
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