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今熊野神社
【いまくまのじんじゃ】


最上郡戸沢村大字古口字長倉に所在。同社の別当高学院に伝わる縁起書によれば,神亀元年,郷民早坂新九郎・磯部万九郎の2人が猛熊を追って岩窟に入ったところ,猛熊は弥陀・薬師・観音の3尊となって光り輝いた。2人は仏の教えにより従来の殺生の罪を知り,仏に帰依し3尊に仕えるようになったと伝えられる。新九郎は修験者となり俊慶法印と称えた。往古湯殿山の一方の登拝道で,当時48坊甍を並べていたが,一時とだえたのを領主清水氏が再興し,神領500刈を寄進したという。清水氏滅亡後は再び衰え,坊舎も廃絶した。しかし,江戸後期に編まれた「新田本新庄領村鑑」には,長倉の高学院の下に不動院・長泉坊・長学坊があったと記されている。今熊野神社の奥の院に懸けてあったという鰐口には「文安四年丁卯林鐘十六日旦那清田願主敬白」の銘があり,熊野信仰の古さを語っている。また,同神社別当にあてられたものとみられる文書に,「月山口の道御はらひ候付而御ゆわいの銀子五拾被差上候,慥に請取申処実正也,だうしや義子細なく御通可有之候。為後日如此に候。仍如件,慶長拾九年三月廿九日 池田孫左衛門 実学院参」とあって,確かに月山登拝口であったことがうかがわれる。同神社の奥の院今神温泉は道者が湯垢離をとる行場として開かれたといわれ,いまもここに湯治する人々は,今熊野神社の拝詞を御詠歌のように唱えながら入湯する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7023803