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浮島稲荷神社
【うきしまいなりじんじゃ】


西村山郡朝日町大字大沼字大比良に所在。祭神は宇迦之御魂命・天熊之大人神。近世には浮島明神と称した。社伝には白鳳9年後証覚の草創,白雉年間役行者の開基と伝え,下って建久4年源頼朝が社殿を再建したという。以後寒河江大江氏・山形最上氏の崇敬を受け,慶安2年10月には127石4斗余の朱印証判を得ていた。明治12年10月には県社に列している。別当坊である大行院には長享2年8月22日「羽州寒河江庄大沼浮嶋州明神境内」の諸役を免除する旨の大江知広諸役免許状以下大江兼広・高基らの安堵状など4点,最上義康・家親関連文書4点などがあるが,研究の余地がある。神社前には元和7年最上家信が父家親急死後の最上氏の安泰存続を祈念して建立した石塔があり,大行院には慶長5年4月下原通から大沼までの最上義光の伝馬印証が与えられている。神社境内にある「大沼の浮島」は県名勝に指定されている。自然林に囲まれ,沼の西北岸の湿原が分離して浮島として沼上を浮遊する姿は,すでに正徳5年の「和漢三才図絵」や寛保3年の「諸国里人談」などにも記録されていた。橘南谿の「東西遊記」(生活史料20)には「出羽国山形より奥に,大沼山といふ所あり。其山主を大行院といふ。……此山のみたらしの大池あり,大沼と名付く。是は池の形大の字に略似たるをもて名付しとかや。此池に奇妙の霊異あり。世間未曽有の奇事なれども,かゝる僻遠の地なる故,尋入る人も稀々にて,知る者すくなし。いかなる事ぞといふに,池の中に六十六の嶋ありて,其嶋時々に水面を遊行す。嶋の数六十六といふは,日本成就の形相といふ」と記されている。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7023848