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湯殿山神社
【ゆどのさんじんじゃ】


東田川郡朝日村,湯殿山に所在。旧国幣小社。祭神は大山祇命。この神社には本殿も拝殿もなく,月山の西南山腹一局部を神域とする「山の神」である。輝石安山岩塊を含む泥流の一堆頂から湧出して堆面を伝わって流れる温泉が御神体とされている。その起源は不明であるが,羽黒修験の徒が月山を験所とし,さらに月山の背後に下降して湯殿山を開き,熊野三山に擬したものと思われる。中世以来月山・羽黒山と並んで出羽三山といわれたが,なかでも湯殿山は総奥之院といわれ,大日如来を本地とし,即身成仏の理を証得する場とされた。また湯殿山は農業と関係が深いと考えられ,信仰をあつめていた。江戸初期に羽黒別当となった天宥が上野寛永寺(現東京都台東区)天海と結んで従来の出羽三山の真言系修験を改めて天台宗寛永寺末とし,三山を統一しようとしたが,湯殿山の修験が猛烈に反対して,実現しなかった。湯殿は羽黒の本山(天台)派に対する対立感情から強い当山(真言)意識を持続し,著しく真言系浄土信仰へ傾斜していった。その結果,即身成仏の実証としての即身仏(ミイラ)を生ずるに至った。現在我が国には20数体のミイラが発見されているが,うち6体が山形県庄内地方にあり,これら6体とも湯殿山で修行した真言系の修験たちであることが注目される。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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