高萩炭礦
【たかはぎたんこう】

常磐南部炭田の炭礦の１つ。当地区の炭礦の試掘は嘉永６年頃から行われていたが，本格的に開始されたのは江戸末期で，徳川斉昭の大砲鋳造のために安政３年頃秋山において採炭が始まった。明治23年桑田知明が高萩・秋山・山部の鉱区を出願。同24年手綱炭礦，同25年地元の松本敬吾と大河内八十路により千代田炭礦が開設された。これは本県における近代石炭産業の最初である。同27年加藤初太郎・坂部貞次郎らが千代田炭礦を合併，改組して，県下の炭礦における最初の株式会社を組織した。同28年千沢平三郎の高萩炭礦，同29年桑田知明の秋山炭礦，同31年中村嘉右衛門の北方礦などが同30年の日本鉄道磐城線開通に前後して開坑。大正３年，九州の古河春一が進出して，高萩・秋山両炭礦を買収し，茨城炭礦を設立。同６年他地区の炭礦を吸収合併して大日本炭礦を設立し，常磐炭田における最大規模の炭礦となる。しかし，第１次大戦後の不況で後退し，高萩地区の炭礦も縮小された。昭和15年菊池寛実が，秋山の鉱区を大日本炭礦から，北方の鉱区を合同炭礦，千代田・関口の鉱区を磐城炭礦より買収し，高萩炭礦を創設。同20年東邦炭礦櫛形礦を吸収し，高萩地区の大半の鉱区を集約した。同21年生産管理闘争が起こる。同22年坑口を高萩礦に集約，従業員約1,800人，同23年望海炭鉱を新設。同25年高萩新坑が竣工し，大量生産方式で合理化を図ったが，同33年頃をピークに次第に衰退し，同42年高萩炭礦閉山。同47年望海炭鉱閉山。同48年櫛形炭礦閉山。同43年高萩炭礦はサービス産業を中心に転換して宿泊訓練施設大心苑を創設，系列会社に高萩製作所・高萩病院・日興建設・高萩エンジニアリングなどがある。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7038110