巴川
【ともえがわ】
県中央部を流れる一級河川。利根川水系の支流。延長32.09km,流域面積126km(^2)。岩間町市野谷・泉に端を発し,美野里町を経て黒川を合流,南東流して鉾田(ほこた)町で北浦北端に流入。台地を開析して流れ,流域には水田も多い。古くは鞆絵川と書かれ,茨城・鹿島・行方(なめがた)の3郡を三つ巴になって屈曲して流れていたためこの名があるという。江戸期には鉾田町紅葉より下流は舟運にも利用され,下吉影や鉾田などの河岸は,水戸方面から江戸への物資の輸送上重要な役割を占めた。当地方から出荷された良質の薪炭類は,小宮山楓軒の植林政策が実を結んだもので,江戸の需要増加に伴い当地方の産物となった。各河岸が扱った移出品は,東北各藩の米穀や農林水産物が主で,明治に入ると板類・空樽・繭・落花生なども積荷された。移入品は,肥料・石油・雑貨類・製粉・セメント・石材・塩など。大正時代に入ると船の大型化により平常の状態では航行不能となったため,上合地区に閘門を設けて水を堰止め,積荷が完了した段階で閘門を開いて水勢によって一気に船を運んだという。しかし大正8年頃に始まる耕地整理や巴川改修および灌漑施設の整備による水量の減少に加え,昭和4年の鹿島参宮線の石岡~鉾田間全通を境に次第に衰退した。
| KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7038539 |