100辞書・辞典一括検索

JLogos

21

温泉神社
【おんせんじんじゃ】


那須郡那須町湯本にある神社。延喜式内社。旧郷社。祭神は大己貴命・少彦名命。誉田別命を配祀する。「ゆぜん」が通称。那須神社とも呼ばれた(旧県史3)。社伝によれば,舒明天皇8年狩野三郎行広が狩りに出,矢傷の鹿が温泉湧出口に浸っているのを発見,温泉の存在を知り,温泉神を祀ったのに始まるという。温泉源そのものを神と見た自然神信仰によるものと考えられる。天平10年の駿河国正税帳によれば那須の温泉は古くから中央に知られており(正倉院文書/大日古編年2),当社も貞観5年10月に従五位上勲五等から従四位下へ,同11年2月には従四位上へ昇叙し,古くから神威を表わしていた(三代実録)。「延喜式」神名帳那須郡条の「温泉神社」は当社のこと。那須与一が屋島の合戦で当社に祈願して扇の的を射落としたことも有名。そのため那須氏の地位は高まり,その勢力範囲に温泉神社が勧請されていった。那須郡には80余社,塩谷郡の那須氏領にも30社を数えた。那須氏代々の氏神とされ,慶長11年には本殿が造営された。のち黒羽藩主大関氏の氏神としても崇敬され,社領20石が寄進された(旧県史3)。別当は湯王山観音寺。明治6年郷社に列格。例祭は献湯祭といい,9月18日~20日。5月8日には那須岳登拝祭が行われる。なお社域北側にある殺生石(県史跡)は噴気ガスと湧出する温泉水で形成された地熱地帯で,九尾の狐であった鳥羽院寵姫玉藻の前は那須野で射殺されたが,その霊は石となって人や鳥獣に害をなしたので殺生石といわれたという伝説がある(下野風土記)。この伝説は室町時代の謡曲「殺生石」の題材ともなった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7041186