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喜久沢神社
【きくさわじんじゃ】


鹿沼市見野にある神社。旧県社。祭神は藤原藤房。喜久沢という地に所在する。藤原藤房は早くから後醍醐天皇の側近にあり,左大弁,参議を経て中納言に進み,正二位に叙せられた。元弘元年天皇は討幕を企て,未然に発覚すると,藤房は天皇を奉じて笠置に逃れたが,翌年捕われて常陸に配流。同3年建武政権樹立とともに上洛し,恩賞方筆頭となったが,政府内部の不和などで政治への情熱を失い,京都北山の岩倉の地に隠棲した。その後の動向は未詳だが,「本朝高僧伝」では,妙心寺(京都市右京区)2世授翁宗弼は藤房の出家した姿だという(仏教全書102)。社伝では,藤房は僧となって当地を訪れ,喜久沢の地に草庵を結んで入寂。明和4年正月山腹が崩壊し,古鏡1面,高さ7寸の三重塔,古銭などが出土すると,里人はこれを藤房の遺物として深く尊信した。下総国多古藩主松平氏はこの遺物の保管を護竜山長光寺(鹿沼市見野)に託し,天保15年万里小路正房が日光例幣使として参向の際この遺物を拝観し,以後例幣使の拝観が例となった。弘化4年正房から藤房の真像が贈られ,山腹に社殿を建立したのが創祀で,遺物は傍に埋蔵したという(以上,旧県史3)。明治5年現社号を称し,同7年県社に列格。同43年現社地に移転した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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