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黒髪山
【くろかみやま】


男体山の別称である。男体山は延暦元年勝道上人によって開かれ,補陀落山と称し,後に二荒山と改められたともいう。仏教と山岳信仰の結びついた一大霊場としての成立は早かった。南麓に二荒山神社が,山頂には奥宮がある。このようなことから「くろかみ」の語について「黒神」にあたり,「神山の樹々の色がうっ蒼とする」ことより称するの説もあるが,古くから和歌の歌枕としてよく使われていた。「万葉集」に「ぬばたまのくろかみ山を朝越えて山下露に沾れにけるかも」とあるのがその例である。しかし,この場合格別に男体山を指してはおらず,くろかみ山を男体山にあてた歌として15世紀の「廻国雑記」に「ふりにける身をこそよそに厭ふともくろかみ山に雪を待つらん」がそれであるという。したがって室町期には男体山の別称となっていたようである。しかし,世間一般に広く知られるようになったのは芭蕉の「奥の細道」中の「黒髪山は霞かかりて雪いまだ白し」(旧暦4月1日の条)との詞書,また曽良の「剃り捨てて黒髪山に衣更」によってである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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