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熊野神社
【くまのじんじゃ】


碓氷(うすい)郡松井田町峠にある神社。旧県社。祭神は伊邪那美命・速玉男命・事解男命・日本武尊。旧中山道の群馬・長野の県境にあり,社殿は上野・信濃国境線上の中央に本宮(祭神は伊邪那美命),群馬県側で右方に新宮(祭神は速玉男命),長野県側の左方に那智宮(祭神は事解男命)の3社が並立してあり熊野三社神社である。創建は社伝によると,景行天皇の皇子日本武尊が東征の帰路に道に迷った時,紀伊国熊野の山中の梛(なぎ)の葉をくわえた八咫烏の案内で無事峠に到着できたことから,熊野神社を勧請したというが,古い峠神信仰により平安末期から鎌倉期にかけて創建されたと考えられる。社宝に松井田衆12人が寄進した正応5年在銘の県内最古の洪鐘(県重文)があり,銘文の「臼井到下今熊野大鐘事」の「到下」は峠の宛字(日本古鐘銘集成)。また文和3年在銘の多層塔(県史資料編8)があることから,中世以来信仰されてきたことがわかる。社名は長倉山の麓に鎮座していたので長倉神社や長倉熊野宮,また碓氷嶺に鎮座することから碓氷神社とも呼ばれたが,江戸期はもっぱら熊野権現または熊野大権現と称し,明治以降に熊野神社となり,明治28年県社に列格。県内の熊野神社は小祠を含めて約360社あるが,当社はその熊野信仰の中心であり,熊野講が組織され,最盛期には講員は群馬・長野・埼玉・山梨各県に及び10万5,000を数えたという。春に御師が配る牛王札を田の水口に差し害鳥よけとし,お札の中の逆烏3羽を切り抜いて飲むと安産という。例祭は5月15日と10月15日で,八咫烏に扮した神楽が奉納され,1月6日には田遊びの神事が行われ,農業の守護神として信仰されている。神官は1年交替で上・信両国の社家で務めている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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