四万温泉
【しまおんせん】

県北部,吾妻(あがつま)郡中之条町四万にある温泉。三国山脈の稲包山(1,598m)の南麓,吾妻川の支流四万川の上流に位置する。泉質はカルシウム・ナトリウム・硫酸塩泉。源泉は45あるが,主要なものは温泉口・日向見(ひなたみ)・新湯(あらゆ)・山口の4つ。湧出量は毎分3,726l。泉温は50~80℃と熱い。温泉の発見は「四万種類もの病を治す霊泉」との神託によるものという説があり,地名もこの神託にちなんだものになっている。温泉は「薬湯」として名高く,リウマチ・神経痛などに特効がある。近世初期から湯治場として知られ,多くの湯治客を集めていた。昭和29年に厚生省の国民保養温泉に指定され,以来,湯治客中心の保養温泉として親しまれている。昭和45年には湯治客は宿泊客の61%を占めていたが,同60年には自炊・半自炊を行う湯治客は全体の10%以下になっている。代わって,遠方からの団体客や家族連れが多くなり,近代的な施設へ増改築する旅館も少なくない。現在,宿泊施設は31軒,収容規模は約4,000人。年間の宿泊利用のべ人員は約50万人。標高750mの渓谷に立地し,標高1,000m以上の山々に囲まれているため,春の新緑,夏の深緑,秋の紅葉が見事である。瀑布も多く,清流にはイワナ・ヤマメが棲み,渓流釣りが楽しめる。赤沢山(1,455m)の中腹には法師温泉までの上越自然遊歩道が通っている。縄文時代の四万遺跡,国重要文化財の日向見薬師堂(室町後期)など歴史的に見るべきものも多い。特産物には野菜と山菜を利用した漬物がある。中之条町の中心部で,国道353号と分かれ,四万川沿いに北西に約16kmで,JR吾妻線中之条駅からバスで約40分の距離にある。交通条件は比較的恵まれている。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7045620 |





