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利根大堰
【とねおおぜき】


県の南東部,邑楽(おうら)郡千代田町上中森と埼玉県行田市須賀の間に設けられた利根川最大の取水堰。利根川水系の総合開発計画の一環として,水資源開発公団が昭和40年に着工し,約36億円の工費と延べ35万人の労働力を投入して,同43年7月に竣工した。鉄筋コンクリート造の可動堰で,長さ691.7m,可動部分は495.4m,門扉12門,取水口の幅126.8m,沈砂池の面積1万2,700m(^2)。ローラーゲートでゴミや堆砂の排出ができるようになっている。また魚道を設けて魚類の保護にも配慮されている。上流部の湛水面積は180万m(^2)で一大人工湖をなし,利根川の流れが2つの地点でせき止められ,大堰を境にして川の自然も変化している。対岸(右岸)の行田市須賀に総合管理事務所があり,コンピュータを使って自動的に管理している。この堰の目的は利根川水系上流のダム群(矢木沢・須田貝・藤原・下久保など)の建設により生まれた利根流水の約30%を利用して,東京の都市用水と荒川の浄化用水の確保,群馬・埼玉両県下の農業用水を安定させ,利水の合理化を図ることにある。大堰からは最大毎秒136.96tを取水する。左岸には利根加用水をはじめ明和用水・坂東用水・北川辺領用水などの農業用水として,最大毎秒3.18tを供給している。右岸には見沼代用水をはじめ羽生領用水・葛西用水・稲子用水・古利根用水などの農業用水として,最大毎秒78.87t,埼玉県都市用水として毎秒9.86t,東京都の上水道用水として毎秒31.59t,荒川の浄化用水として最大毎秒23.4tを供給する。そのために武蔵水路(毎秒50t)↑荒川↑朝霞水路(毎秒54.01t)↑新河岸川↑都の浄水場への新しいルートが開かれた。このことにより「東京砂漠」ともいわれたほどの東京都の水不足はほぼ解決された。なお,しばらく途絶えていたサケの溯上が昭和57年頃から復活し,同59年には小学生が「利根大堰をサケがのぼりやすいようにしてほしい」旨の手紙を中曽根首相に出したことなどにより,大堰の魚道が改良され,同60年秋からはサケの溯上が増加している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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