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鳩ノ湯温泉
【はとのゆおんせん】


吾妻(あがつま)郡吾妻町の西部,大字須賀尾にある温泉。吾妻川の支流温川上流の右岸にあり,対岸の温川温泉,約300m上流の薬師温泉とともに,最近では浅間隠温泉郷と呼ばれるようになった。いずれも1軒宿で,南西約5km,長野原町応桑(北軽井沢)との境界にある浅間隠山(1,757m)を望むひなびた環境にあるということからであろう。含芒硝重炭酸土類泉で泉温40℃(県薬務課資料)。神経痛やリウマチ・婦人病・高血圧・胃腸病などに薬効があるとされている。鳩の湯の由来については,「吾妻郡誌」に「一羽の鳩あり。岩間の温泉に浴し,負傷を治療せる奇跡をみて里人温泉の効顕を知り,鳩の湯と名づけた。上野国志の花の湯のこと」と記されている(3羽の鳩という説もある)。「坂上村誌」によれば,開発年度不明,寛政5年,旅の行者温泉坊宥明なる者が発見し,湯小屋を建てたと記されている。江戸期には街道に近く,利用者も多かった。明治期に入り,温川に橋を架け,旅館は2階建てで三鳩楼といった。明治43年水害により流失し,その後復興したが,大正2年火災で焼失,のち平屋建てとなり,昭和39年に改築し2階建てとなり今日に至っている。温川ではイワナやヤマメが釣れ,カジカの声も聞ける。周囲の山ではゼンマイ・ワラビ・ヤマウドなどの山菜が豊富にとれ,キジ・ヤマドリ・ノウサギなどの猟もできる。春の新緑,夏の避暑,秋の紅葉などで訪れる浴客は,大正3年約300人,同10年7,910人の記録がある。戦後の統計では,近くの薬師温泉と合わせて昭和37年約9,000人,同46年1万4,850人であった。対岸(左岸)の温川温泉も,早期に開発されたが,水害のため荒廃した。昭和初年,天然に湧出し,眼病に効くということから「目の湯」と呼ばれていた。昭和4年10月正式に温泉(含硼酸石膏食塩泉,35℃)となったが,同10年またも水害で流失。昭和36年に現在の経営者が再開発して,翌37年から温泉利用許可を得ている。なおほかにも近くの河川敷から湧出した温泉を「あな湯」といって,昭和4年に開発したが,同30年の水害で流失してしまった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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