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武蔵野
【むさしの】


古代以来の原野名。一般には関東平野西部の武蔵野台地を指し,広義には関東または武蔵国の原野をいう。「新編武蔵」では「古は十郡に跨て,西は秩父峯,東は海,北は河越,南は向ケ岡,都築原に至ると云々,最広漠の野なりしことは諸書紀行の類にも載たり」と記す。初見は「万葉集」巻14収載の東歌数首「むらさきのゆかりの色も問ひわびぬみながら霞むむさしのの原」(藤原定家:続後拾遺集)「むさし野に生ふとし聞けば紫のその色ならぬ草もむつまじ」(小野小町:続古今集)など古来,紫の主材で歌枕として多くの歌人にうたわれている。また紀行文等に「紫生うと聞く野も,蘆荻のみ高く生い繁りて,馬にのりて弓持ちたるすえ見えぬまで」(更級日記)と茫々たる風景が述べられ,武蔵野の逃げ水としても有名。江戸期には「江戸より五六里ほど西」の,現在の武蔵野市付近の原野が特に武蔵野といわれて江戸文人の一夜泊りの行楽地となり(続砂子),一方広大な武蔵野原野は中世までは水が乏しく雑木林が点在していたが,江戸中期頃から玉川上水等の開削を契機に大規模な新田開発が行われ,享保年間を中心に80余の武蔵野新田が成立した。近年では,東京首都圏の拡大により,幾多の衛星都市が発達,国木田独歩の「武蔵野」に記された雑木林の繁茂する武蔵野の面影は急速に姿を消しつつある。武蔵野の地名は現在は市名や私鉄路線名などに使われている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7064821