早川
【はやかわ】

箱根の芦ノ湖に源を発し,箱根火山を刻み込むように足柄下郡箱根町仙石原を経て,宮城野で火打石沢,底倉で蛇骨川,湯本で須雲川を合わせて東流し,小田原市早川で相模湾に注ぐ。流長20.7km・流域面積107.4km(^2)の2級河川,早川水系の主流。「新編相模」によれば,仙石原では三度川,または逆川,底倉では荒川といったという。川名は,箱根山中の無数の渓流を集め,急流となって流れることによる。当河川は箱根の渓谷美を作っている一流であるが,急流のために,かつてはしばしば下流地域に水害をもたらしていた。現在では小田原市早川地区などの灌漑用水として利用されている。また,江戸期に,当河川の水を湯本から取り入れた荻窪堰は有名である。この水は,渋取川となって山王川に合流している。当河川は,伝説および文学の中にも登場している。奈良期に箱根芦ノ湖には9つの頭を持つ竜がすみ,村人たちを恐れおののかせていた。これを知った万巻上人(権現中興の祖)は湖中に石段を作り,日夜祈り続けるうちに竜が現れ上人にわびたという。その後,上人は湖の東岸に九頭竜神社として祀ったという伝説がある。また,阿仏尼の「十六夜日記」には,「麓に早川という川あり,まことに早し」とみえ,当時の早川は,海士の藻しお木を海へ流し出すほど水量も多く大きな川だったことがうかがわれる。また,与謝野晶子は「足柄の裾の湯本に椿咲き早川鳴るや脈打つやうに」と歌っている。当河川の河床には温泉の湧出する所が多く,箱根町の木賀・堂ケ島・底倉・湯本などの温泉場は古くから知られ,箱根温泉群の中心部となっている。また,当川は小田原市の早川・大窪地区の灌漑用水としても利用されている。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7068587 |





