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黒部川
【くろべがわ】


県の東部を貫流する1級河川。北アルプス中央部の鷲羽(わしば)岳(2,924m)と祖父(じじ)岳(2,821m)の間に発して北流し,愛本(あいもと)付近で流れを西に変え,黒部市と入善(にゆうぜん)町との境をなして日本海に注ぐ。流長86kmで,24の支流を有す。「此川は北陸七大河の一つにて,第六を黒部川とす。……此谷の内,山村の外には田地方の村なき故に,川源は山廻りの者の外知る者なし。……古より黒部四十八ケ瀬と云伝たる大河なり」「水上は薬師ケ嶽南東の谷川,ぬくい谷川・はりの木谷川・立山北の谷川・大黒部谷川・小黒部谷川・黒なき谷川,右七瀬,奥山にて落合,夫より海辺まで黒部川と云。河原之内所々枝川之れ有り,川尻にて二瀬に相成,芦崎村領・荒俣村領より海へ流出。水上より海端まで道程相い知らず」(大路水経・宝暦十四年調書/越中志徴)。かなり古くから知られた川で,「源平盛衰記」「北国紀行」「吾妻紀行」「義経記」などにも記載がある。愛本より上流で本流に入り込む主な支流としては,薬師沢(やくしざわ)・岩苔小谷(いわごけこだに)・東沢(ひがしざわ)が,雲の平(くものだいら)を迂回したあたりで入り,黒四ダム下流で内蔵助(くらのすけ)沢・別山(べつさん)沢を合わせ,十字(じゆうじ)峡で滝となって落下する剣沢(つるぎさわ)と棒小屋(ぼうごや)沢を加える。さらに祖母(ばば)谷・黒薙(くろなぎ)川を合わせて,愛本から下流に黒部扇状地を展開させている。江戸期に入ると松尾芭蕉の「奥の細道」をはじめ,黒部川の記述は豊かになるが,奥山については,加賀藩が政治上の理由から,入山を禁じ奥山廻り役をもって視させていたため,一般には知られなかった。明治に入ってこの禁が解かれ,黒部の秘境を広く世に紹介したのは冠松次郎である。愛本から下流では黒部扇状地を形成するが,かつては無数の乱流が網の目のように流れ下り,先の「源平盛衰記」以下の書にも「黒部四十八ケ瀬」として,旅の難儀が記されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7081255