南アルプス林道
【みなみあるぷすりんどう】

南アルプススーパー林道ともいう。中巨摩(なかこま)郡芦安村芦倉から北沢峠(2,032m)を経て,長野県長谷(はせ)村平を結ぶ総延長56.98km(野呂川林道を含む)の南アルプス国立公園内を走る山岳道路。本県側34.138km,長野県側22.842kmうち国立公園内29km,事業費48億8,400万円。昭和42年着工,同54年完成。林道構造は平均勾配本県側3.9%,長野県側5%,最急勾配11.5%。最小半径20m,幅員4.6m,路面は砂利道。当林道は,昭和14~17年にかけて早川流域の森林資源利用のため,早川下流の早川橋右岸詰から早川の支流深沢までの54kmの間に森林鉄道が敷設されたのがはじまり。第2次大戦後,昭和26年早川上流の野呂川流域の開発が計画され,その1つ野呂川林道開設が同27年7月着手され,起点を芦安村桃ノ木橋とし,10年の歳月を費して同37年10月に同村広河原までの延長2万4,139mの林道を,県直営事業で10億6,000万円を投じて完成。この間に,林道としてはわが国で最長の夜叉神トンネルや,糸魚川静岡構造線の通る観音経トンネル付近の開設には多くの困難があった。トンネルにはこのほかアカヌケトンネルなどがある。橋は,鳳凰山地に発して野呂川左岸に注ぐ,カレイ沢・アザミ沢・赤沢・シレイ沢などに架かる。鷲住山入口には林道工事殉職者の慰霊碑があり岩峰鷲住山または鷲ノ住山(1,534m)の登り口。深沢は白根北岳への池山吊尾根コース・義盛新道の下降点。北岳登山口で当林道分岐点となり南アルプス北部山域への登山基地。林道は県営駐車場を経て野呂川に架かる野呂川橋を渡って,野呂川右岸を遡行する県道野呂川波高島停車場線(通称電源開発道路)を合わせて,国民宿舎広河原ロッジのある広河原に至る。広河原からは国鉄中央線甲府駅・国鉄身延線身延駅にバスが夏季のみ通る。当林道の経路は,広河原から野呂川左岸を遡行し,早川尾根―東広河原沢―西広河原沢―北沢橋―雪投沢―北沢峠―長野県側に入る。北沢峠には北沢峠長衛荘があり,双児山・駒津峠から甲斐駒ケ岳(2,965.6m)と仙丈ケ岳(3,032.7m)への分岐点となる。広河原~北沢峠間は芦安村営のバスが夏季のみ運行され,長谷村営の戸台~北沢峠間のバスと連絡している。当林道の開設により,林業経営条件および立地条件の改善や,森林の治山管理,森林レクリエーション,地域産業等への寄与が考えられるが,構造谷をなす地帯で高山地帯を通る道路であるため,冬季の通行不能と維持・管理,多量降雨時の通行規制があって恒久的利用が懸念される。昭和57年10号台風災害で利用不能となっている。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7098499 |