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八島ケ原湿原
【やしまがはらしつげん】


諏訪市と諏訪郡下諏訪町にまたがる湿原。霧ケ峰高原にある3つの高層湿原(八島ケ原・踊場・車山)のうち,最も大きな湿原で,高原の北西端に位置する。八島ケ原湿原は標高1,630m,各辺の長さが1,000m,800m,750mの三角形をしており,面積約72万m(^2),そのうち34万715m(^2)の区域が,霧ケ峰湿原植物群落の一部として国の天然記念物に指定されている。湿原には3つの池がある。北西隅の八島ケ池(長さ100m,最大幅70m)は,池中に十数個の浮島をもつので七島八島とも呼ばれる。北端には鬼ケ泉水(長さ36m,最大幅18m),鎌ケ池(長さ250m,最大幅50m)がある。一般に高層湿原では,植生の生育場所が水位より高く,厚い泥炭層の上にミズゴケなどを密生させた,皿時計を伏せたようなドームができる。八島ケ原湿原ではドームが東西に2個並んでいる。ドームの下の泥炭層が最も厚い所は8.1mあり,泥炭層の成長速度からみて,この湿原は1万~1万2,000年前にできはじめたと推定される。湿原には,ヌマガヤ・チャミズゴケなどのミズゴケ類,ホロムイスゲ・ミカズキグサなどの群落が見られる。キリガミネヒオウギアヤメはこの湿原固有の植物。昭和43年に白樺湖と霧ケ峰の間にビーナスラインが開通したが,同年ビーナスラインを八島ケ原湿原と湿原の近くの旧御射山(もとみさやま)遺跡を通って美ケ原まで延長する計画が発表された。この計画をめぐって,自然保護などの立場から反対運動が起こり,その結果,道路は湿原と遺跡を迂回する形成で作られることになった。新田次郎の小説「霧の子孫たち」はこの問題をテーマにしたものである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7103784