遠州灘
【えんしゅうなだ】

御前崎町御前崎付近から愛知県渥美半島までの沖合一帯の海域をいうが,広く伊豆半島先端石廊崎から三重県大王崎(だいおうざき)付近までの海域をいう場合もある。天竜川河口沖合の海域を指すため,別名天竜灘ともいう。この海域の海底地形は複雑で,全域にわたって大陸棚が発達。特に御前崎付近では広範囲に発達し,大陸棚外縁部の水深は約150mである。西方に行くにしたがって深く,渥美半島付近ではその水深は300mに達する。しかし天竜川河口沖合には,天竜川沖海底谷が曲折し,大陸棚を二分している。御前崎付近から駿河(するが)湾にかけての地域と並んで,この遠州灘沖一帯は地震の空白地域として知られ,近い将来東海沖地震発生の可能性が大きいとして話題となり,これを契機として,わが国の地震予知体制が整備されつつある。明応7年,この地方を襲った大地震と大津波で砂州が決壊して今切(いまぎれ)が出現し,浜名湖は外海の遠州灘とつながった歴史がある。御前崎から伊良湖(いらこ)にかけての遠州灘海岸一帯は,単調な砂浜海岸をなし,特に浜松市以東地域には,強い西風と沿岸流のため中田島・浜岡・千浜(ちはま)などの砂丘が発達し,太平洋側ではわが国最大の砂丘を形成。これらの砂丘を総称して遠州灘砂丘という。遠州灘沿岸には,天然の良港をもたないが,伊良湖・舞阪・御前崎などの港がある。遠州灘は,大陸棚が良く発達し,大・小河川の流入もあって好漁場を形成し,黒潮の離接地域にあたるため,暖流系の魚が多い。シラス漁も見られる。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7110175 |