法海寺
【ほうかいじ】

知多市八幡にある寺。天台宗。山号は薬王山。本尊は薬師如来。文安元年6月の薬王山法海寺儀軌によれば,天智天皇の代,熱田社の草薙剣を盗んで新羅に逃亡しようとした沙門道行が,風雨にあって失敗,尾張国星崎に幽閉されたのち一寺を建てた(尾張の遺跡と遺物3)。道行は天皇の病気を治したので,天皇は自刻の薬師像と勅額を与え,二階清水荘を寺本荘と改めて田97町・畠75町を与えた。俗別当は天平勝宝13年8月に凡河内氏通と定められ,田70町・畠100町・山50町を与えられた。その後,勤尊・勤操・空海と住持し,俗別当は教通・宗通・言通と次第したという。境内から発見された瓦により,7世紀後半の創建はほぼ確実である。市内如意寺蔵の明徳3年7月16日の大般若経巻15奥書に「於尾州智多郡額石保法海寺理性房書写畢,禿筆金剛智定叡」とあり,巻600にも同様の奥書がある。密蔵院蔵の「灌頂故実」奥書には「有宿縁尾州智多郡法海寺江被写畢……大永二年壬午十月……右筆法海寺華王院源栄」とある(昭和現存天台書籍綜合目録上)。慶長5年の関ケ原の戦の際に西軍の九鬼氏に焼かれた。近世は密蔵院末。かつて12坊あったというが,近世以来3坊が現存。鎌倉期の金剛界・胎蔵界曼陀羅,室町期の涅槃像と紅頗黎色阿弥陀如来図は県文化財。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7123055 |