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伊良湖の島
【いらこのしま】


万葉地名・歌枕。渥美半島先端の伊良湖岬(愛知県渥美町)。神島(鳥羽市)説・鳥取県説もある。「万葉集」には「麻続王の伊勢国の伊良虞の島に流さるる時,人,哀しび傷みて作る歌」として「打ち麻を麻続王海人なれや伊良虞の島の玉藻刈ります」と出てくる。伊良湖岬は伊良湖の島と呼んでおかしくない島状地形をしている。三河国に属するが,伊勢神宮の荘園であったところから,「伊勢国いらこの渡り」(古今著聞集)とも呼ばれたのである。柿本人麻呂の「潮騒に伊良虞の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻を」は著名で,この伊良湖島を神島と想定して三島由紀夫の「潮騒」は構成された。作中の歌島は神島の別称(神宮雑例集)。歌枕としての「いらご崎」「いらごが(の)島」も,「和歌初学抄」が三河とするのみで,「五代集歌枕」「八雲御抄」「謌枕名寄」など伊勢としている。「玉藻刈る伊良湖が崎の岩根松幾世までにか年の経ぬらん」(千載集,顕季)。西行が伊良湖の鷹を詠んでおり,「鷹一つ見付けてうれしいらご崎」(芭蕉)の句碑がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7125338