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涙川
【なみだがわ】


歌枕。松阪市松ケ崎と一志(いちし)郡三雲村小津の境をなす三渡川。小川であるが,松ケ崎辺りは入江状。鎌倉中期までの歌詠200余首を数えるが,伊勢国と確認できるのは次の1首。「男の伊勢の国へまかりけるに 君が行く方にありてふ涙川まづは袖にぞ流るべらなる」(後撰集)。「五代集歌枕」「八雲御抄」「謌枕名寄」等も伊勢国とする。地名としてよりも涙を流す形容として詠むものが多い。「つれづれのながめにまさる涙川袖のみぬれて逢ふよしもなし」(古今集)。歌枕として三渡川に定着するのは江戸初期。「三渡りの中に流るる泪(なみだ)川袖岡山の雫なるらむ」(勢陽雑記),「尾津村と松崎との間に流るる川を三渡と云。是を涙川とも云へり」(伊勢名所拾遺集)。「伊勢参宮名所図会」「勢陽五鈴遺響」も同様。「いづこまで送りはしつと人問はばあかで別るる涙川まで」(業平集)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7128373