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伊吹山
【いぶきやま】


胆吹山・伊富貴山・伊服岐山・夷服岐山とも書く。坂田郡伊吹町と岐阜県揖斐(いび)郡春日村との境にある。標高1,377mの伊吹山地の主峰で,滋賀県第一の高峰。奈良期,役行者によって開山された山岳仏教の聖地で,平安期には7高山の1つに数えられた。南の尾根に伊吹山寺があり,伊吹百坊といわれた。また西南麓の伊吹に,伊富岐大神を祀った式内社の伊夫岐神社があり,古く嘉祥3年朝廷から神階従五位下を与えられている(文徳実録)。仁寿年間,僧三修が護国寺を建立,さらに伊夫岐神社の別当寺として弥高・観音・太平・長尾の4か寺が建てられた。なお伊吹社は天文5年,洪水により流された社殿を再興しているが,天文9年再興の「三宮奉加帳」の分も合わせると勧進した人数は1,338名にも及び,信仰の深さも広がりがうかがわれる(伊夫気文書)。戦国期伊吹には伊吹三郎左衛門尉次家・伊吹新兵衛尉・伊吹三郎兵衛・伊吹又三郎・伊吹家兼・伊吹彦九郎(伊夫気文書)らの名があり,「佐々木南北諸士帳」では宮士として伊吹出雲・伊吹式部の名をあげている。また伊吹山は古来伊吹艾(もぐさ)の産出で知られ,また歌枕としても著名。「後拾遺集」に収められた実方朝臣の「かくとだにえやは伊吹のさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを」という歌に見られるように,古歌では「さしも草」として詠まれている。山麓は針葉樹林・広葉樹林地帯となっており,山頂には測候所・みろくの石像・日本武尊の石像,南面はスキー場がある。3合目以上は草地で,植物の種類は約1,700種におよび,織田信長がポルトガル人宣教師に命じて薬草園を開いたといわれ,江戸期以来,山麓の中山道の相原宿では「伊吹もぐさ」が売られた。動植物・先史遺跡とともに学術上の価値も高い。琵琶(びわ)湖国定公園に属する。東海道本線近江長岡駅より登山口までバスで15分の距離,山頂へ関ケ原からはドライブウェイも通じている。麓に大阪セメントの工場がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7130583