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琵琶湖
【びわこ】


滋賀県の中央部に位置する断層陥没湖で,日本最大の湖。名称は北方に広く南方に縮小していく湖形が楽器の琵琶に似ていることに由来する。古称は淡江(おうみ)丹穂(にほ)(鳰)のうみ,高島郡・伊香郡あたりでは足利(あしりの)湖とも呼ばれた(輿地志略)。琵琶湖の名で呼ばれはじめた時期は明らかでないが,伊藤仁斎の「過琵琶湖作」などに見られる。「西北紀行」に「この湖の形は能く琵琶に似たり。堅田より北十七里は東西広し,琵琶の腹に似たり。堅田より勢田まで四里は東西狭く,一里の内外あり。譬えば琵琶に鹿首あるが如く狭し。勢田より宇治まではやや狭し。琵琶の海海老尾に比し,竹生島を覆手に比す」とある。琵琶湖の成因について,孝霊天皇5年に一夜にして湖となり,同時に富士山ができたという伝説がある(帝王編年記)。面積681km(^2)(県面積の約6分の1),湖岸線235.2km,長軸は塩津と瀬田の間で63.49km,最大幅は長浜市下坂浜町と高島郡新旭町の間で22.08km・最小幅は琵琶湖大橋付近で1.35km,湖面の標高85.0m,最大水深-103.58m・平均水深-41.2m,貯水量275億t,流域面積3,848km(^2)。湖底には20数か所の遺跡があり,湖北の葛籠尾崎(つづらおざき)沖の水深60mから縄文土器が上ったほか,湖岸につづく湖底からはシジミ貝塚,弥生中期の集落跡,水田の遺跡,条里の遺跡が発見されている。琵琶湖の水運は,明治初期の鉄道開発,さらにその後の自動車交通の発達までは,単に近江一国の地方的交通路にとどまらず,淀川(よどがわ)の水運とも結びつけて,大阪・京都と東国・北陸をつなぐ重要な幹線路であった。 東岸からは野洲(やす)川・日野(ひの)川・愛知(えち)川・犬上(いぬかみ)川・姉川などの河川が流入し,それぞれに三角洲を形成,それらが複合して湖岸(湖東)平野が発達している。これに対し西岸から流入する河川は安曇(あど)川だけであり,比良・比叡の山地が断層崖をなして迫っている。一方北岸には山地が直接接しており変化に富んだ湾入を形成。南方では野洲川の三角洲を境に湖域が急に縮小,これを境に北湖(太湖(たいこ))から南湖にかわり,さらに唯一の排水路である瀬田川へと続く。また湖岸には大中ノ湖・松原内湖をはじめとする内湖(付属湖)を多く有していたが,第2次大戦の戦中から戦後にかけて干拓地や埋立地として消滅した。北湖(主湖盆)の大部分が-60m以上の水深と,透明度7~10mを有し,貧栄養湖であるのに対し,南湖(副湖盆)では最大水深でも-4mにすぎず,透明度は2~3mで,富栄養湖であり,汚染が著しく,近年は夏場になると赤潮の発生をみるほどである。水温は夏季の最高が表面で約30℃,冬季の最低水温でも約6℃であるため結氷しない。このため湖の生物には固有種が非常に多い。暖水・冷水両魚類が生棲し,約60種を越えるが,特にゲンゴロウブナ・ホンモロコ・イサザ・コアユ・ハス・ワタカなどは琵琶湖の特産種である。アユの稚魚は全国各地の河川に放流されるが,一方琵琶湖にもビワマス・ニジマス等の稚魚が放流されている。これらの淡水魚を,沖合に竹の簀を張りめぐらし,魚の通路を遮断して,壺という囲いに追い込む魞(えり)漁は湖岸の開発によって姿を消しつつある。貝類の種類も43種にのぼり,そのうち特にイケチョウガイは淡水真珠の母貝として南湖を中心に盛んに養殖されており,シジミもセタシジミで名高い。 湖周辺の気候は湖西の高島町白鬚(しらひげ)神社と湖東の愛知川河口とを結ぶ線をほぼ境にして北部は裏日本式の北陸型,南部は表日本式の瀬戸内型に区分される。このため北部は多雪地域の南限で一毛作田が多い。また冬季にはスキーでにぎわう。これに対し南部はからっ風が強く乾燥しているが雪は少なく二毛作田が多い。しかし湖岸における温度差は年間を通じてきわめて小さく,湖盆が気候の緩和に大きな役割を果していることがうかがえる。豊水期は3~4月の融雪期,6~7月の梅雨期,9~10月の台風期に分けられるが,夏季の流入量は不安定である。このため古来しばしば洪水に見舞われている。しかし明治37年瀬田川に南郷洗堰(なんごうあらいぜき)が完成して以後は極端な水位の変動は少なくなった。さらに昭和36年には新洗堰へと改築された。 ところで,琵琶湖は「近畿の水甕」として湖水自体の利用が開発の焦点となってきている。このため昭和47年に琵琶湖総合開発特別措置法が立法化され,利水・治水・保全間の相互の矛盾を従来のように単なる湖や河系だけの問題とせず,地域総合開発によって解決しようとする計画が進められている。また昭和25年7月,わが国最初の国定公園に指定された。さらに同年,夕陽:瀬田石山の清流,煙雨:比叡の樹林,涼風:雄松崎(おまつざき)の白汀,暁霧:梅津大崎の岩礁,新雪:賤ケ岳(しずがたけ)の大観,月明:彦根の古城,春色:安土・八幡の水郷,新緑:竹生(ちくぶ)島の沈影の「琵琶湖八景」が定められた。




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「角川日本地名大辞典」
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