伊根港
【いねこう】

奥丹後半島の東岸，与謝(よさ)郡伊根町南端にある港湾。東側は，亀島地区の半島が南に延び，南方に開いた湾口を青島がふさぐ天然の良港。昭和30年若狭湾国定公園に編入。冬季，若狭湾にはブリの魚群が回游し，当港はブリ漁の根拠地。最近は獲る漁業から作る漁業への転換がはかられ，漁礁を作ったり，養殖にも力を入れている。当港を含めた海岸一帯は江戸期には伊根浦（稲浦・伊禰の浦）と呼ばれる名勝地であり，ブリ・クジラの好漁場であった（丹後風土記）。港の周辺には船屋という海に面した二階建ての家屋が並ぶ。一階は船倉，二階は漁具置場・住居として使用され，独特の漁業集落の風物となっている。西方の岬周辺は高さ50～60mの海食崖で囲まれ，マツ・シイなどの魚付林におおわれ，一部が農林水産省所管の海岸保全区域に指定される。岬頂上の千賀城山には一色氏の部将千賀山城守の大島城跡がある。また，平田の集落より港に突出している蜂ケ崎は，七面堂（愛宕社）と忠魂碑で知られる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7136759