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入佐山
【いるさやま】


但馬国の歌枕。位置の確定が困難で2説ある。1つは出石(いずし)郡出石町宮内に所在するとするもので,「地名辞書」は「宮内の此隅山のつづきの嶺を云ふとぞ,今明白ならず」とし,地元では此隅山の東方で総持寺の西方に位置する標高197mの山地一帯と比定する。他の一説は,出石町東条の沢庵和尚で知られる宗鏡寺の裏山(標高180m)とするもので,沢庵が,この裏山を入佐山に見たてて多くの歌を詠んだことによる。初見は「後撰集」秋下の「梓弓入佐の山は秋霧のあたることにや色まさるらむ」(源宗于)で,「源氏物語」末摘花には「里わかぬ影をば見れどゆく月の入るさの山々誰かたづぬる」があり,和歌では「いる」と掛けて月とともに詠まれるのが一般的であった。所在地不明のまま歌枕として多用され,順徳天皇の歌論書「八雲御抄」で但馬国にあるとされた。元日を詠む沢庵の和歌に「めぐりきて入佐の山の月も日もはるやむかしに我身ひとつは」があり,西鶴の「好色一代男」に「桜も散るに嘆き,月は限りありて入佐山」とある。「名所栞」は,入佐山の景物として,霞・花・帰雁・鵑・五月雨・照射・雁・鹿・月・霧・紅葉・落葉・時雨・椎柴・雪・嵐・松・風・雲・鷹・山あららぎなどを挙げている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7155857