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野中の清水
【のなかのしみず】


神戸市西区岩岡町野中にあったとされる清水。現在,その所とされる場所に長さ30m・幅10mの琵琶形の池とその来歴を示す石碑がある。西行が播磨国書写山円教寺参詣の途次立ち寄り,「昔見し野中の清水かはらねばわが影をもや思い出づらん」(山家集)と詠んでおり,「増鏡」の後醍醐天皇隠岐遷幸の記事に「野中の清水,二見の浦,高砂の松など,名ある所々」とあり,歌枕として有名。初見は「古今集」雑上,よみ人知らずの「いにしへの野中の清水ぬるけれど元の心を知る人ぞ知る」で,ここでは文字どおり「野の中の清水」と解し得るが,「和歌童蒙抄」「奥儀抄」などの歌学書で地名とされた。また,河内国説もあるが播磨国印南野説が有力で,「最勝四天王院障子」の名所和歌に「印南野や野中の清水むすぶ手のたまゆら涼し篠の上露」と詠まれている。岩岡町野中の南方に明石市魚住町清水の地名があることや洪積台地の開析谷の谷頭部に地下水の湧水が見られることから,この付近一帯のどこかに比定地を求めることは,穏当であろう。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7162184