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三ツ塚廃寺
【みつづかはいじ】


氷上郡市島町上田字三ツ塚に所在。国史跡。奈良前期創建の寺院跡。由良川の支流である竹田川の左岸段丘上に位置し,国道175号の東約600mの地点にある。現在は史跡公園として公開されている。周辺には掘立柱建物群,窯跡群,古墳などがあり,三ツ塚遺跡と総称されることもある。以前から東西に並ぶ3基の方形土壇や,瓦の出土から寺院跡と推定されていたが,圃場整備事業が周辺に及ぶことになり,高井悌三郎らを中心に昭和47年から同50年にかけて発掘調査が行われた。寺院跡は地形上の制約のためか,金堂を中心に両塔がその左右に一直線に並ぶ,いわゆる新治廃寺式という類例の少ない伽藍配置をとっている。基壇はかなり崩壊していたが,金堂基壇は東西12.8m,南北10.0mほどで,5間×4間の建物である。金堂から約5mほどの間隔をあけて,東西に塔基壇がある。塔基壇は一辺10.8mの瓦積基壇で,東塔中央には径約1.5mの花崗岩製の地下式心礎が露出している。講堂は検出されず不詳であるが,中門・東門・築地を伴う北門が検出され,南北1町,東西がそれより30尺ほど広い寺域が推定されている。主要堂塔の周辺には数十棟に及ぶ掘立柱建物群があり,民家ではないかとも考えられているが,推定寺域内にあり,かつ方位も伽藍方位と一致しているので,寺院の付属施設,あるいは地方官衙など他の性格をもつ建物群の可能性もある。主要な出土遺物には,素縁八葉蓮華文軒丸瓦・重弧文軒平瓦・素文軒平瓦があり,前二者が創建時瓦のセットと考えられている。ほかに,三彩釉陶器,「高田南」と読む可能性の高い墨書土器などがある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7164005