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秋津野
【あきつの】


古代の原野名。秋津小野・蜻蛉小野ともいう。「記」「紀」とも,雄略天皇による地名命名の由来をのせる。「書紀」では,天皇が吉野宮に行幸し,吉野川河岸の原野で猟をした折,射ようとした天皇の臂を虻がった。その虻を蜻蛉が忽然と飛来して囓って去ったので,天皇はその蜻蛉を讃めてこの原野を蜻蛉(あきづ)野と名づけたとする(雄略紀4年8月20日条)。「万葉集」にも持統天皇が吉野宮に行幸した折に柿本人麻呂が作った長歌「山川の清き河内と御心を吉野の国の花散らふ秋津の野辺に宮柱太敷きませば」(36)をはじめ,数首に歌われている。その位置について「大和志」吉野郡山川の条では「在川上荘西河村名区也」とし,「大和志料」でもその説を踏襲している。現在も吉野郡川上村西河の音無川に蜻蛉の滝がかかる。しかし,「万葉集」巻6では,元正天皇が養老7年5月に吉野離宮に行幸した折,笠金村が作った長歌に「み芳野の蜻蛉の宮は」(907)とあり,同郡吉野町宮滝に設けられた吉野宮の付近とするべきだろう。中世には「かげろふのをの」と訓まれて歌枕となる。なお,神武紀31年4月乙酉条に,天皇は狭い国ではあるが,蜻蛉が連なって飛んでいくように,山々が続き囲んでいると大和の国状を賛美し,そこから国号「秋津洲」が起こったという伝承が見える。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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