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三輪の檜原
【みわのひばら】


桜井市の中央部,三輪山の西北麓にある丘陵。檜原岡とも呼ばれ,標高110~130m。「万葉集」巻7に「往く川の過ぎにし人の手折らねばうらぶれ立てり三輪の檜原は」,巻10に「巻向の檜原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る」など「巻向の檜原」「三輪の檜原」として6首が詠まれている。これらの檜原が同一のものであったかについては,辰己利文はもともと同じ場所が三輪側と巻向側の両方から呼ばれたものであるとみなしているが(大和万葉地理研究),阪口保は檜原は地名ではなく,鬱蒼たる檜の林相の地の呼称であり,のちに現在の檜原の地名として固定されたものとみなしている(万葉集大和地理辞典)。丘陵の東端には檜原神社があり,この地は倭の笠縫邑の最も有力な伝承地で,「書紀」に崇神天皇の頃天照大神を祀り倭姫命が巡幸した土地であるという記述がある。江戸期までは社殿があったといわれるが,現存しない。檜原神社の南には玄賓庵があり,奈良興福寺の名僧で桓武天皇の信仰も篤かった玄賓僧都の隠棲の場所であるといわれている。現在は山門と一堂を残すだけである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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