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妹山
【いもやま】


伊都(いと)郡かつらぎ町の西端,紀ノ川中流左岸に位置する。標高124mの河岸段丘状の地で,独立した山容をなさず,南側の標高586.7mの北山の斜面にある。「万葉集」に見える歌枕として著名で,「万葉集」巻7に「紀道(きぢ)にこそ妹山ありといへ玉櫛笥(たまくしげ)二上山(ふたがみやま)も妹こそありけれ」と詠まれている。紀ノ川を隔てて背山(せのやま)と対峙する。本居宣長は「万葉集」巻3に「𣑥領巾(たくひれ)の懸けまく欲しき妹が名をこの勢(せ)の山に懸けばいかにあらむ」および「宜しなべわが背の君が負ひ来にしこの勢の山を妹とは呼ばじ」と歌われていることを根拠にして,「兄の山といふ名につきて,妹といふことをもよめれば,又妹山といふことをも,まうけて,歌のふしとせるなるべし」と妹山の実在を否定している(玉勝間/思想大系40)。また,本居内遠は背山に2つの峰があることから,2つの峰を妹山・背山と詠んだのだろうと説く(妹山背山弁/本居宣長全集12)。「続風土記」は西志富田村の項に「村の西にありて紀ノ川の南の崖に臨み北の方兄山と川を隔て相対す……兄山に対するを以て古人妹山と号つく」と記す。「万葉集」巻7には「背の山に直に向へる妹山事許せやも打橋渡す」と詠まれている。異説もあるが,「万葉集」に見える妹山をこの地に比定するのが一般的である。なお,「続風土記」には「里老の伝へに昔雛子(ひなごの)長者といふ豪富あり。此山上に居住す。故に雛子山とも長者屋敷ともいひ其下の川辺を雛子川原といふといへり」と記されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7170498