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宇久井港
【うぐいこう】


東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町宇久井にある3つの港の総称。勝浦温泉から5km北東方に位置する宇久井地区の東に熊野川の運んだ土砂で形成された陸繋島があり,砂州を挟んで北に宇久井漁港(第1種漁港),北東に宇久井東港(フェリー基地,那智勝浦港),南に商港の宇久井港(地方港湾)がある。商港の宇久井港は,かつては地元漁船に利用されていたが,昭和20年代に後背地に巴川製紙および三重県鵜殿の紀州製紙ができたことにより,木材関連の貨物量が年々増加。昭和34年,県が荷役機械を設置する等の港湾整備を行い,さらに県・町が浚渫の土砂で港内に埋立事業を進め,昭和40年約8万7,000m(^2)の土地造成が完成。同時に港内泊地や接岸施設の整備を行い,商港としての設備は整った。新宮港が完成するまでは,熊野灘で工業原料を扱う唯一の商港であった。現在は製紙原料ならびに原木類のほかに,港内の石油基地用の石油が移入され,建築骨材の砂利が昭和35年ごろから移出されている。周囲2.5kmの港で,湾口の鍋島が白須鼻と防波堤で結ばれ,台風時の南方からの波浪の流入を防いでおり,湾口は南へ開いている。東から南東にかけて宇久井半島が熊野灘の荒波と風を防いでいる。天然の良港で,帆船時代からの避難港でもあった。商港の中に漁船用の船溜もある。宇久井漁港は漁船専用の港で,町の北部,上地の浜にある。宇久井の漁業は,大型定置網漁業・火光利用棒受網漁業・引縄漁業・磯漁業などで,もっぱら沿岸漁業である。宇久井東港は古くは風待港であった。現在は日本高速フェリーの基地で,20数億円の巨費を投じて,昭和48年に竣工しオープンした。宇久井半島の東端,目覚山の下の海岸に230mの接岸用の岸壁がつくられ,港は国道42号に通じている。東京―那智勝浦―高知を結ぶ大型フェリーさんふらわあ号が,東京~那智勝浦間459km,所用時間13時間50分,那智勝浦~高知間285km,所用時間7時間30分で結び,紀南の海の玄関口の役目を果たしている。このフェリーの就航で,紀南の観光に関東地方のバスが乗り入れるようになった。フェリー基地に続く東側海岸は岩礁が多く磯遊びの適地であり,西側海岸は砂浜で,夏は数万人の海水浴客でにぎわう。フェリー基地のある山は海岸段丘で,温泉のある国民休暇村がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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