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紀仙郷県立自然公園
【きせんきょうけんりつしぜんこうえん】


那賀郡の岩出町・打田町・那賀町・粉河(こかわ)町にまたがる県立自然公園。昭和33年4月7日指定。面積1,811ha。全域普通地域。紀ノ川を挟んで,北側は岩出町根来(ねごろ)の住持(じゆうじ)池から粉河の桜池に至る和泉山地南麓斜面と,粉河寺・長田観音の飛地,南側は最初峰から竜門山を経て飯盛山に至る山地,それに飛地として岩出大宮神社社地と対岸の船戸山古墳群が公園区域に含まれている。和泉山麓および竜門山地からの紀ノ川中流域の展望と,根来寺・粉河寺をはじめとする古社寺の探訪が中心である。根来寺は保延6年高野山を追われた覚鑁上人が開いた新義真言宗の総本山。中世末には威勢を示したが,天正13年豊臣秀吉紀州攻めの初戦に寺坊のほとんどを焼亡,焼け残った多宝塔(国宝)・大師堂(国重文)のほか,その後建立した山門など20余を残すのみ。庭園は国名勝で,サクラの名所として知られる。覚鑁が根来寺鎮護のために創建したと伝える岩出町の大宮神社は根来寺とともに焼亡。紀伊徳川氏初代頼宣が再建。大宮神社と紀ノ川を挟んで相対する御殿山(箱山)は対岸に造られた和歌山藩主別邸の借景地で,船戸山古墳群(県史跡)がある。船戸(岩出町)と清水は大和街道の渡津で,清水には伝馬所,船戸には通船管理の刀禰役所が置かれていた。和泉山麓には住持池・海神(うながみ)池・桜池など多くの池があり,雨の少ない紀ノ川流域の開発は溜池によっていた。海神池には式内社海神社がある。根来寺に近い県緑化センター付近では和泉山麓を走る中央構造線の逆断層が見られる。紀ノ川流域を眼下にする山麓からは紀伊国分寺跡(国史跡)も眺望される。粉河寺は宝亀元年創建と伝える西国3番札所。秀吉に焼かれるまでは多くの堂塔・坊舎を有したが,今は江戸中期に再建された大門・中門・本堂など20余が残る。庭園は国名勝。同寺から西方へ2kmにある厄除けで知られる長田観音はサクラの名所。紀ノ川南岸の竜門山地は古生層の緑泥片岩からなり,含銅硫化鉱床を含み,黄銅鉱を採掘する飯盛鉱山があったが昭和43年閉山した。竜門山地の主峰竜門山は蛇紋岩の噴出によるもので,紀州富士の名がある。頂上に磁石岩(県天然記念物)や風穴がある。最初峰とともに「太平記」に記された南北朝期の古戦場。鞆淵八幡神社は鞆淵川に沿う山間にあり,国宝の神輿と国重文の本殿・大日堂が昔をしのばせる。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7171191