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袋港
【ふくろこう】


西牟婁(にしむろ)郡串本町二色にある地方港湾。西は砥崎,南前方には潮岬(しおのみさき)があって太平洋の荒波を避ける天然の良港。江戸期から商港として栄えた。「日本汐路之記」には「上下港,汐の岬へ壱里。上々の大港なり ふくろとも錦の袋とも言う」とある。歌人長沢伴雄は「温峰温泉日記」の中で「袋底の如き入江に船が多くかゝれり,みな江戸難波の廻船なりけり」と繁栄ぶりを記録している。また,加納諸平は「柿園詠草」で「むろの海のにしきの袋せばけれど百船入江雨つつみけり」と歌っている。江戸期には古座(こざ)鯨方の捕鯨の基地があった。熊代繁里の「熊野日記」の中にも,クジラを船で引き,絞車で巻き揚げる様子が記録されている。大正2年から熊野運輸商会の小型汽船が串本(袋)~田辺間に就航したが,紀勢西線の南下とともに乗客が減少して廃止された。現在では建設用の砂が荷揚げされる程度。港内には小型造船所・験潮場がある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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