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吉野熊野国立公園
【よしのくまのこくりつこうえん】


和歌山・三重・奈良3県にまたがる国立公園。昭和11年2月1日指定。総面積5万8,751ha,うち県内は1万1,713.4ha。県内では新宮市・東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町・太地(たいじ)町・古座(こざ)町・本宮(ほんぐう)町・熊野川町・北山村,西牟婁郡串本町にまたがる。昭和25年軍事的制約が解けて潮岬(しおのみさき)地区を追加。さらに同40年吉野洞川地区編入。同45年串本海中公園として熊野枯木灘海岸県立自然公園から串本町錆浦地区を編入。同50年鬼ケ城から尾鷲海岸地区,同51年二木島海中公園地区を編入。当公園は熊野灘に臨む海岸地帯と,吉野山から大台ケ原に至る山岳地帯および両地帯を結ぶ熊野川(新宮川)と支流北山川の峡谷地帯の3地帯を主に串本海中公園を含む地域で構成される。その地形景観は,紀伊半島を形成した地殻変動の過程を物語る。大峰山・大台ケ原山には準平原の隆起と浸食の過程が,熊野川水系には隆起に伴う嵌入曲流が,また熊野灘海岸には隆起と沈降の反復による海成段丘と出入の激しい海岸線が現れる。熊野灘海岸は第三紀に海底の堆積層が隆起した熊野層群の石英粗面岩・頁岩・砂岩・礫岩の互層によって構成される。七里御浜や佐野の砂礫海岸,潮岬(県名勝),勝浦,宇久井の陸繋島,また全般的に広がる海岸段丘などの隆起地形と同時に,その間に浦神半島,玉ノ浦,梶取(かんどり)崎,灯明崎,森浦湾,狼火崎,勝浦湾,宇久井半島などのリアス式海岸に近い沈降地形が相互に入り混じる。さらにその間には橋杭岩(国名勝・天然記念物)のように中新世の火山活動によって噴出した石英安山岩が海食を受けて生じた特異景観も見られる。この古い火山活動は,勝浦湾やゆかし潟のほとりの勝浦温泉・湯川温泉に名残をとどめている。熊野灘の荒海は大島樫野崎や勝浦の紀ノ松島に典型的な海食崖や岩礁を形成している。また,串本の近海には優れた海中景観で知られる串本海中公園がある。同公園は昭和41年の調査を経て,日本最初の海中公園に指定されたもので,範囲は錆浦地区陸面および海面2.3ha。海中では石サンゴの群落と熱帯魚類の生態を見ることができる。国道42号に面した錆浦海浜に水族館・海中展望台・グラスボート・休憩所を主とした公園施設がある。先行性の嵌入曲流とその峡谷美は熊野川支流北山川の瀞八丁(国特別名勝・天然記念物)に極まるが,熊野川本流の峡谷も九里峡の名で知られている。瀞八丁探勝にはウォータージェット船が就航,熊野本宮大社参詣やその湯垢離場として知られた国民保養温泉(昭和32年指定)の湯の峰・川湯温泉郷と一体の観光地である。熊野灘海岸と熊野川水系の自然景観に,さらに神秘的魅力を加えているのは,熊野三山である。神話の故地としても知られる熊野地方にあって,熊野三山の創建も神秘に包まれている。加えて平安期の昔から続く朝野の人々の参詣は,多くの史跡と伝説をこの地に残している。熊野川中流右岸の丘陵に鎮座する本宮大社は,明治22年の水害後の社殿であるが,付近には旧社地大斎原(おおゆのはら)(県史跡)や中世行幸御宿泊所本宮竹の坊屋敷跡(県史跡)など,また熊野川河口の新宮速玉大社付近には蓬莱山(県史跡),神倉山(県史跡),秦徐福墓,藺沢浮島植物群落(国天然記念物),新宮城跡などがある。那智大滝(国名勝)を神体とする那智大社,青岸渡寺(本堂,国重文)は那智原始林(国天然記念物)に覆われ,那智山旧参道の杉並木(県天然記念物)や中世行幸啓御泊所跡実方院・尊勝院(県史跡)などがあり,峰続きの妙法山には阿弥陀寺がある。紀州路をたどる三山参詣路のうち,大辺路(おおへち)はほぼ熊野灘海岸をたどって新宮へ,中辺路(なかへち)は本宮を経て大雲取越え・小雲取越えの険路を越え,那智山から錦浦濱ノ宮で大辺路に交わる。ここに浜の宮王子社跡(県史跡)と並んで渡海信仰で知られる補陀洛山寺が建っている。




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「角川日本地名大辞典」
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