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倉吉往来
【くらよしおうらい】


美伯往来ともいう。津山の山北から,美作・伯耆国境の人形峠を越えて倉吉(鳥取県)に至る陰陽連絡路の1つ。山北―一宮(以上津山市)―香々美新町―切畑―百乢(ももだわ)(以上苫田郡鏡野町)―養野―福見―奥津―長藤―下斎原(以上同郡奥津町)―上斎原本村を経て人形仙の東肩を越え(以上同郡上斎原村),伯耆側の急坂を下って倉吉に達した。現在の国道179号の人形峠(739m)は,明治39年旧道の約3km東に付け替えられている。また,上斎原本村からは,石越―平作原―小林―恩原(以上上斎原村)を経て,辰巳峠(795m)を越えて佐治谷(鳥取県)に通じる通称因幡道があり,住民の生活道路として利用されていた。香々美新町は,吉井川の支流香々美川の川湊で,鉄・木炭の集散地。奥津は鉄山稼ぎ・奥津牛および温泉場,上斎原は鉄山稼ぎや木地師の活動で,近世初頭から知られていた。この往来は道幅の狭い,急な山道が多いため,奥津・香々美で馬継ぎが必要であった。泉山の山腹を険しい小径で越す百乢の難路を避けて,明治37年に久田―羽出―奥津を結ぶ現在の国道179号の経路に変更された。上斎原から津山への荷駄は道中に2,3日を要したといわれ,北の伯耆からは魚や塩が運ばれた。なお,現在の人形峠は,原子燃料公社および動力炉・核燃料開発事業団によるウラン鉱開発事業で脚光を浴びている。奥津は美作三湯の1つに数えられているが,藤原審爾(備前市出身)の出世作「秋津温泉」とその映画化によって広く知られた。倉吉往来は伯耆往来の1つでもある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7183550