100辞書・辞典一括検索

JLogos

8

黒髪山
【くろかみやま】


新見市街地の北東にそびえる山。標高648m。山名の由来は,山姿秀麗にして山上に常緑の老樹が繁茂していることによるという(阿哲郡誌)。また大同3年に唐より帰朝した空海が豊永赤馬に三尾寺を開基し伯耆の国に向かう途中,この山が長安の黒髪山に似ていることから伽藍を建立し,黒髪山青竜寺と名付けたと伝えられていることによるともいう。山頂近くに真言宗青竜寺があることから青竜寺山ともいう。青竜寺は天正年間に毛利・尼子両氏の戦いで焼失し,万治年間に松山藩主水谷勝隆が本堂を再建,元禄11年関氏が新見に封ぜられて以後は藩の祈願所となる。青竜寺には空海の作とされる聖観世音像,運慶の作とされる不動明王・毘沙門天・金剛力士像がある。地質は安山岩を基盤とし,土壌は褐色森林土に覆われている。大正3年,牧野富太郎博士によって発見されたアテツマンサク(クロカミマンサク)が山頂近くに自生しており,昭和52年には新見市環境保全条例により青竜寺周辺一帯を黒髪山自然保護地区に指定している。人丸の「ぬばたまの黒髪山を朝越て山下露にぬれにけるかも」(続古今集),行家の「色かへぬ黒髪山の山かつらかくてや久に仕へまつらむ」(新千載集),玄賓僧都の「旅人のますげの笠やくちぬらん黒髪山の五月雨のころ」など古来歌枕として多くの歌に詠まれ,現在も新見市の象徴として校歌などに詠み込まれている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7183566