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能登香山
【のとかやま】


英田(あいだ)郡作東町小野の東部,同郡大原町との境界近くにある山。標高397.8m。山名は,東北麓の大原町粟野の古名野時村に由来するとされる。山体は変質した中生代末期の安山岩類からなり,山頂部がラクダの背のように2つに分かれて奇観を呈するため,双子山(二子山)とも呼ばれる。両山頂部にはそれぞれ,雨神の能登香神,風神の早風神を祀る祠がある。特に西北頂に鎮座する能登香神は,旱魃の際に地元民によって雨乞神事が行われ尊崇されていた。このことから竜王山との俚称もある。西麓の小野側からの眺望はよく,双頭の山頂の優美な姿は,古来から名山として多くの口誦伝承を生み,「英田郡誌」にも「貴人風流士等絶えず遊びて,山容の美を愛で題詠も多かりしならん」と記されている。また,「万葉集」の歌枕の山として知られ,巻11の相聞歌に「紐鏡能登香の山は誰ゆえぞ君来ませるに紐あけず寝む」の一首がある。幕末に備前国の万葉歌人平賀元義が幾たびも訪れて,「能登香山妹が門みにわが来れば今さかりなり夏さくの花」「能登香山かゆきかくゆき妹とわれ秋の紅葉を今日も見るかも」などの歌を残している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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