虫明往来
【むしあげおうらい】

江戸期，岡山城下と虫明村（邑久(おく)郡邑久町）を結んでいた往来。「むしゃげ」とも称した。全長７里10町。この往来は主に虫明に陣屋を置いた岡山藩筆頭家老伊木氏の往来路であった。岡山城下から藤井―沼―楢原と山陽道を通り，一日市（以上岡山市）から吉井川を舟で渡り，福岡―土師高橋―福里に出て千田川に沿って稲荷山―飯井を経て，荒池・乢池の間（以上同郡長船町）を抜けて青石―亀井戸―佐山―富尾に至り，八反峠（以上備前市）を越えて，つづら折れの険しい道を福谷に下り，虫明（以上邑久町）に達する。この往来は，安政３年の世直し一揆（渋染一揆）の群衆が家老伊木氏に嘆願書を出そうとして進んだ道であり，また，慶応４年伊木忠澄が勇戦隊を率いて，備中松山藩征討に向かった道であった。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7186946